バイオロジックメイトの概要:なぜADAMTS5で予測可能なのか?

近年関節リウマチ(RA)治療は、バイオ製剤(生物学的製剤)の登場で飛躍的に進歩してきました。しかし、このバイオ製剤も万能ではなく、無効例もありまた副作用も出やすいため、有効性が前もって推測できれば初めから有効例に投与することができると考えられています。
    
 ADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs) ファミリー分子は、MMP(matrix metalloprotease)ファミリー分子やADAM(a disintegrin and metalloproteinase)ファミリー分子とよく似た構造式をもつ軟骨破壊酵素として知られています。その中でも、ADAMTS5分子は、RAや変形性関節症(OA)患者血中に発現されOAの起因分子とも考えられています。このADAMTS5分子の発現はTNFαでもTGFβでも誘導されないことが報告されています。また、最近になってIL-6がADAMTS5発現を抑制するという報告がされました。

 この点から私たちは抗TNFバイオ製剤の有効性とADAMTS5分子発現、およびIL-6受容体に対するバイオ製剤とADAMTS5分子発現とに着目し、とくにインフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)、トシリズマブ(アクテムラ)、アバタセプト(オレンシア)の有効性と投与前血中ADAMTS5発現量とを比較検討しました。まず、末梢血を採取した後にTotal RNAを抽出し、RTでcDNAに変換後、リアルタイムPCR法でADAMTS5 mRNA量をβアクチンとの相対量で算出しました。 その結果、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が低値であった場合、インフリキシマブ(レミケード)投与14週後の寛解(DAS28<2.6)を優れた感度で予測することができました(詳しくはこちら)。また、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が低値であった場合、エタネルセプト(エンブレル)投与20週後の著効例を優れた感度で予測することができました(詳しくはこちら)。一方で、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が高値であった場合、アダリムマブ(ヒュミラ)投与20週後の寛解(DAS28<2.6)を優れた感度で予測することができました(詳しくはこちら)。さらに、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が高値であった場合、トシリズマブ(アクテムラ)投与12週後の寛解(DAS28<2.6)を優れた感度で予測することができました(詳しくはこちら)。また、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が高値であった場合、アバタセプト(オレンシア)投与24週後の寛解(DAS28<2.6)を優れた感度で予測することができました(詳しくはこちら)。

     このことから、投与前の血中ADAMTS5 mRNA量が低い時にはインフリキシマブ(レミケード)(国際特許公開 No.WO/2010/038840)あるいはエタネルセプト(エンブレル)が、高い時にはアダリムマブ(ヒュミラ)(国際特許公開No.WO/2011/065168)、トシリズマブ(アクテムラ)、あるいはアバタセプト(オレンシア)が有効であることが示され、ADAMTS5 mRNA量で、生物学的製剤の使用を選別することができることを見い出し、これを診断薬として応用することを目指し開発しました。また、ゴリムマブ(シンポニー)もアダリムマブ(ヒュミラ)と同様の完全ヒト型抗TNFαモノクローナル抗体型バイオ製剤ですので、ADAMTS5 mRNA量が高い時には有効である可能性が高いと思われます。しかも、これらバイオ製剤の有効性は、他のバイオ製剤からの切り替えの場合でも予測可能です。

なぜADAMTS5で予測可能なのか?

インフリキシマブ(IFX)についてはADAMTS5が低値(<1.2 Index)の場合に、アダリムマブ(ADA)についてはADAMTS5が高値(>1.7 Index)の場合にそれぞれの生物学的製剤が有効になるのですが、同じTNFαをターゲットとする薬剤なのに、何故ADAMTS5の値が逆なのかというご質問をよくいただきます。

 

ADAMTS5はメタロプロテアーゼの一つで、軟骨破壊に関与する酵素ですので、RA患者でもADAMTS5が高値例では軟骨破壊が進行している症例が多いことは報告されてきています。今回、当社でADAMTS5と自己抗体、とくにリウマトイド因子(Rf)について検討を重ねて来ました。その結果ADA投与患者ではADAMTS5高値例(>1.7 Index)と低値例(≦1.7 Index)とで比較しますと低値例で有意にRf陽性率が高く(83% vs 50%, p<0.001)、ADAMTS5低値例では軟骨破壊の影響が小さいがRf高値に伴い、ADA不応例が多くなることが予想されました(下図)。すでに世界的にはRfは多剤生物学的製剤に不応で予後不良因子と考えられています。

一方で、IFX投与患者では、ADAMTS5高値例(>1.2 Index)と低値例(≦1.2 Index)とで比較すると、高値例・低値例でRf陽性率に有意差がない(67% vs78%, p=0.31)ため、純粋に軟骨破壊の程度がIFX反応性に反映されていると考えられました(下図)。

じつはこのADAMTS5とRfとの関連性(逆相関)は、同じメタロプロテアーゼであるADAMTS4ならびにMMP-3でも認められます。このように、ADAMTS5による生物学的製剤有効性は、軟骨破壊という因子とRf初めとする自己抗体との関連という因子の二つの因子のバランスによって決まることが明らかになってきました。

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